糖尿病動物の齲蝕形成に関する研究ー唾液腺障害との関連性についてー

URI http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hirokoku-u/metadata/12397
File
Title
糖尿病動物の齲蝕形成に関する研究ー唾液腺障害との関連性についてー
Title Alternative
The study of dental caries development related to salivary gland disorder in diabetic animals.
Author
氏名 西本 大輝
ヨミ ニシモト タイキ
別名 Nishimoto Taiki
Abstract

齲蝕発症には宿主素因・病原菌・糖質の3要因が必要とされている。従来の実験動物による齲蝕研究ではラットが用いられ、糖含有量の低い一般飼料では齲蝕が発症しないため、多量の糖を添加した齲蝕原性飼料を摂取させる実験が主であった。最近、糖尿病ラットにおいて、非齲蝕原性飼料の摂取条件で齲蝕が誘発されることが報告され、高血糖の持続が齲蝕発症に重要であることが明らかになった。一方、ヒトおよび齧歯類では、糖尿病は唾液腺障害にも深く関与し、また糖尿病とは関係ない疾病において唾液腺障害は齲蝕発症要因の一つであることが報告されている。したがって、糖尿病動物の齲蝕発症に唾液腺障害が関与している可能性は高いと考えられるが、両者の関連性を解析した報告はない。
そこで、本研究では、既に齲蝕発症が明らかになっている薬物誘発および自然発症の糖尿病ラットとともに、殆ど齲蝕解析が行われていない糖尿病マウスを用い、高血糖状態による齲蝕進行と唾液腺障害の関連性を明確にすることを目的とした。
<第一章 アロキサン誘発糖尿病ラットおよびアロキサン誘発糖尿病マウスにおける齲蝕形成と唾液腺障害の関連性について>
1型糖尿病モデルのアロキサン(AL)誘発糖尿病ラットは、13 週間の高血糖持続で歯冠崩壊を伴う高度の齲蝕を発症するが、4 週間では齲蝕は発症しないことが報告されている。また、AL 誘発糖尿病マウスにおける齲蝕の報告はない。一方、糖尿病ラットでは、唾液腺分泌障害や唾液腺の形態異常が生じている事実から、その齲蝕発症に唾液腺障害が関与している可能性はかなり高いと考えられるが、両者の関連性を示す報告はない。そこで、本研究のAL 誘発糖尿病ラットでは齲蝕の初期形成に要する高血糖期間を7週間(歯冠崩壊が生じる13 週間の約半分の期間)と予想し,経時的な唾液腺の機能変化とともにAL投与後7 週の歯芽および唾液腺の形態変化を調べ、糖尿による齲蝕発症と唾液腺異常の関連性について解明を試みた。一方、AL 誘発糖尿病マウスでは、ラットの既報告と同様のAL 投与後4 週および13 週の歯芽の形態検査に加え、唾液腺について機能・形態学的検査を実施し、両動物間における齲蝕発症と唾液腺障害に種差があるか否かを検討した。
高血糖を持続したAL 誘発糖尿病ラットでは、投与後1週よりピロカルピン誘発による唾液分泌量は有意に低下し、投与後7 週では未処置ラットの50%以下であった。投与後7週の軟X線検査および実体鏡観察では、糖尿病ラット臼歯に齲蝕と判定される病変は観察されなかったが、組織学的には齲蝕の初期病変が細菌の集簇を伴う象牙質の微細欠損として検出され、耳下腺腺房細胞内に明瞭な脂肪蓄積が観察された。また、形態計測学的に糖尿病動物の咬合面摩耗の頻度および強度は未処置ラットと比較して顕著に増強しており、本摩耗が臼歯咬合面のマクロの形状を変化させていることも明らかとなった。
一方、AL 誘発糖尿病マウスの唾液分泌量は経時的に減少し、咬合面摩耗の頻度および強度は未処置マウスと比較して顕著に増強した。しかし、AL 投与後13 週においても、糖尿病マウスではラットに報告されるマクロでの典型的齲蝕像は認められず、耳下腺腺房細胞の組織学的異常も検出されなかった。
以上より、AL 誘発糖尿病ラットでは耳下腺障害が初期齲蝕形成に関与しているとともに、新たにこの耳下腺異常が関与していると思われる臼歯咬合面の摩耗が進行している事実も明らかとなった。一方AL 誘発糖尿病マウスではラットと同様に唾液分泌障害と臼歯の咬合面摩耗は経時的に進行するが、齲蝕および耳下腺の脂肪蓄積はラットと比較すると極めて軽微であり、ラットおよびマウス間で糖尿病による齲蝕形成に明らかな種差があることが新たに示された。
<第二章 Zucker ラットの齲蝕形成に対する唾液腺機能障害の関与> 
Zucker ラットは、2型糖尿病モデルのZucker Diabetic Fatty rats (ZDF)、肥満モデルのZucker Fatty rats (ZF)および糖尿・肥満を発症しないZucker lean (Lean)の3 系統があり、いずれの系統も齲蝕を発症する。本章では、Zucker ラットの3 系統で齲蝕進行に差があることに注目し、齲蝕形成と唾液腺の関連性を、糖尿病および肥満因子の観点から解析した。その結果、ZDF およびZF の唾液分泌量は、10、26 および42週齢時の全ての測定時点でLean と比較して有意な低値を示し、42 週齢時にはそれぞれLean の10%以下および約50%に減少した。臼歯歯冠の部分欠損はいずれの群でも認められたが、その程度はZDF >ZF> Lean の順であり、ZDF およびZF では齲蝕による歯冠崩壊も観察された。唾液腺の組織学的解析では、いずれの群でも耳下腺または舌漿液腺の腺房細胞に空胞変性が認められ、その程度および頻度はZDF で最も高度であった。
以上より、Zucker ラットの3系統における臼歯齲蝕の強度は、唾液分泌量の減少および漿液性唾液腺の脂肪蓄積の程度にほぼ一致することから、本系統の齲蝕形成には糖尿病および肥満因子に起因する唾液腺機能障害が関連している可能性が高いと考えられた。
以上の結果、ラットでは1型および2型の糖尿病モデルともに、耳下腺の脂肪蓄積を伴う唾液分泌量の低下が、齲蝕の発症・進行に深く関与していることが明らかとなった。また、1型の糖尿病ラットおよびマウスの比較研究では、両動物で明らかな唾液分泌量低下および臼歯の咬合面摩耗が生じているにもかかわらず、マウスではラットのような耳下腺の脂肪蓄積および急激な齲蝕進行は観察されないことから、糖尿病動物の唾液腺障害および齲蝕形成には明瞭な種差があり、高血糖の持続による齲蝕形成に複合的要因が関与している可能性が示唆された。

Journal Title
【2016年度】_博士論文[全文・要旨]
Language
jpn
NIIType
Thesis or Dissertation
Text Version
博士論文全文を含む
Rights
Copyright (c) by Author,データの複製(印刷・ダウンロード等)は、調査研究・教育または学習を目的としている場合に限定されます。
Grant ID
薬博甲第2号
Dissertation Identifier
35413薬博甲第2号
Degree Grantor
広島国際大学
Degree Level
博士(doctor)
Degree Descipline
薬学
Granted Date
2017-2-24
Set
hirokoku-u