日本の相続法における遺留分制度に関する研究

URI http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hue/metadata/12386
File
Title
日本の相続法における遺留分制度に関する研究
Title Alternative
A Study on the Reserved Portion System in Japan’s Inheritance Law
Author
氏名 餅川 正雄
ヨミ モチカワ マサオ
別名 Mochikawa Masao
Subject
総体的遺留分
特別受益
寄与分
持ち戻し
遺留分減殺請求
Abstract

本研究は,現行の民法(相続法)における遺留分制度について,「法の正義(分配的正義:distributive justice)」の視点から,遺留分制度は今後も存続させるべきという立場で考察を加えるものである。この遺留分制度の内容は,特別受益や寄与分などの扱いがどうなるのかなど,法律の専門家でない一般の国民が相続の問題に直面した場合には,それが非常に分かりにくく複雑なものになっているという現実がある。それだけでなく,民法の立法上の不完全さもあって,国民の常識的な法律解釈の範囲を超えているという問題があると認識している。それは遺産相続について誰が何をどれだけ相続するのかという問題について,家族や親族間で争いが発生するという裁判が多いことが証拠である。

本論では,以下の5つの問題を考究する。第一に遺留分制度の存在理由(reason for existence)について歴史的に考察し,日本の遺留分法(民法規定)は,条文解釈においてローマ型の現物返還ではなくゲルマン型の価値返還と捉える方が理解しやすいことを論述する。第二に配偶者が子とともに相続人となる場合には,配偶者の遺留分が基礎財産の四分の一になるという現行の規定は,妻の通常の貢献分(二分の一)が確保できないという問題を指摘する。第三に直系尊属(父母・祖父母)だけが相続人になる場合,総体的遺留分率が三分の一になっているが,その他の場合には二分の一になっていることとの不合理があることを指摘する。第四に特別受益の持ち戻しの問題(生前に「特別受益」を受けた相続人があった場合)については,それを遺留分算定の基礎となる相続財産に算入するという説(算入説)と,算入しないという説(不算入説)があるが,筆者は算入説を支持することを設例によって論述する。第五に「寄与分」について認定は,民法では上限設定はないが,遺留分の争いの範囲ではひとまず棚上げして対応する必要があることを論述する。

遺留分に関する規定は,現行民法の採用している共同相続制度(joint inheritance system)において生ずる問題について十分な配慮がされていないという立法上の問題がある。それについては,現在,民法改正の準備が進められているところであるため,本研究においては今後の民法の改正に関する考察は対象外としている。

Contents

1.はじめに 1.1問題意識 1.2研究対象 1.3研究の前提 1.4筆者の立場 2.遺留分制度の起源 2.1フランス慣習法起源のゲルマン型遺留分制度 2.2ローマ法系起源のローマ型遺留分制度 2.3筆者の見解 3.遺留分制度の趣旨と民法の規定 3.1相続人の保護と被相続人の処分の自由 3.2遺留分制度の趣旨と民法の規定 3.2.1被相続人の処分権についての考察 3.2.2遺族の生活保障についての考察 3.2.3潜在的持分についての考察 3.2.4筆者の見解 4.現行の相続法における遺留分制度の考察 4.1遺留分の帰属とその割合 4.2抽象的割合としての総体的遺留分率 4.3個別的遺留分率 4.4遺留分算定の基礎財産 4.4.1相続開始前に贈与があった場合 4.4.2生前贈与が相続人になされた場合 4.4.3遺留分算定の計算式 4.4.4筆者の見解 4.5兄弟姉妹に遺留分権がない理由 4.6遺留分権利の行使方法 4.6.1遺留分権に基づく減殺請求権 4.6.2遺留分算定の設例 4.6.3筆者の見解 4.7遺留分と特別受益の関係 4.7.1特別受益としての遺贈 4.7.2特別受益としての生前贈与 4.7.3特別受益の持ち戻し制度 4.7.4特別受益の持ち戻しの設例 4.7.5特別受益の主張が認められない場合 4.7.6特別受益の解釈としての「算入説」と「不算入説」 4.7.7筆者の見解 4.8寄与分についての考察 4.8.1遺留分と寄与分の関係 4.8.2特別の寄与がある場合の設例 4.8.3筆者の見解 5.相続債務を負担する場合の遺留分額の計算方法 6.遺留分減殺請求と相続税法の関係 7.おわりに

Journal Title
広島経済大学研究論集
Volume
41
Issue
1
Spage
23
Epage
46
Published Date
2018-06-30
Publisher
広島経済大学経済学会
ISSN
0387-1444
NCID
AN00408380
Self DOI
Language
jpn
NIIType
Departmental Bulletin Paper
Text Version
出版社版
Set
hue