メロン果実の成長と品質における種子の役割に関する研究

URI http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/pu-hiroshima/metadata/9523
ファイル
タイトル
メロン果実の成長と品質における種子の役割に関する研究
著者
氏名 李 新賢
ヨミ リ シンケン
別名 Li Xin Xian
抄録

メロン果実において外観、糖含量及び香りは品質を決定する上で最も重要な要素であり、果実の価格はこれらの要素によって大きく左右される。 着果が不安定であるメロンの生産現場では、着果促進剤として1-(2-chloro -4-pyridy1)-3-pheny1urea(CPPU )が一般に使用されている。しかし、CPPU処理によって着果が促進されるが、しばしば果実品質の低下を招くといった問題が生じている。その為、植物果実の成長機構及び糖蓄積機構並びに香気形成の仕組みを解明することは、農作物の収量・品質を高める上で極めて重要な課題である。本研究はメロン果実の成長、糖蓄積及び香気形成のメカニズムを種子形成との関連性の下に解明することにより、高品質果実生産技術の開発に寄与しようとするものである。1. CPPU処理は受粉の有無にも関わらず、100%の着果を誘導するとともに、果実の初期成長を促進した。CPPU使用による果実の品質低下は後期成長の鈍化による果実の矮小化、低糖度、不良着色、細小なネットによるものであり、官能評価の結果からも、果実の品質は全面的に劣った。 その原因については、CPPU処理が受粉不完全な場合、単為結実を誘導することによってもたらされることを明らかにした。 種子がスクロース蓄積及び後期成長と密接に関連していることが示された。2. 種々の植物成長調整物質を処理し、単為結実果における矮小化及びスクロース蓄積能低下を克服する有効物質のスクリーニングを行い、p-chlorophenoxyacetic acid (p-CPA)が顕著な回復効果を示すことを見いだした。 またp-CPA処理法としては100mg L-lの濃度で、開花後10日及び25日目の果実への2度散布が最も適切であった。さらに、このp-CPA処理は、単為結実果のみならず、人工受粉果(種子あり)のスクロース濃度をも著しく高めたことから、高品質メロン栽培の実用技術となり得ることが示された。このような果実発育期間中のp-CPA処理では、安全性には問題がないが、p-CPAが果肉部に極微量で残留することが認められた。3.着果及び果実初期成長並びにCPPUの促進効果について: 人工受粉によって着果する子房の内生indole-3-acetic acid (IAA) 含量は開花前日から開花後2日目にかけて急激に増加し、CPPU処理はさらにそれを著しく助長した。 落花する未受粉花の子房では内生IAA含量が減少した。着果する子房部の内生abscisic acid (ABA)含量が徐々に低下したのに対し、落花する未受粉花の子房では内生ABA含量が急増した。 CPPU処理は子房部のインベルターゼ(acid invertase: A I,neutral invertase: NI)活性を著しく高め、invitroにおいてもCPPUは果肉ディスクのAI及びNI活性を増加させた。受粉による子房部のインベルターゼ活性の上昇はCPPUによる増加に比べ遅れた。 これらからCPPUによる着果及び成長促進にはインベルターゼやIAAが介しているとの知見を得た。インベルターゼの活性化並びに内生IAA含量の増加及び内生ABA含量の低下はメロン果実の着果と密接な関連性があることが明らかになった。 インベルターゼは果実の高いシンク能をもたらし、着果及び初期成長に極めて重要であると推定した。 また、開花時に高いスクロースリン酸合成酵素(sucrose phosphate synthase :SPS)及びスクロース合成酵素(sucrose synthase-cleavage direction: SS-c)活性が認められ、これらの酵素も開花及び着果に関係していることが窺えた。4. 生育中・後期の果実成長及び糖蓄積並びにp-CPAの促進効果について : 開花後30 日目からのスクロース蓄積に伴い、スクロース合成酵素(sucrosesynthase-synthesis direction: SS-s)活性が顕著に上昇した。しかし、種子なし果実ではスクロース蓄積量が低下し、SS-s活性が種子あり果実に比べ低レベルで推移した。 スクロース蓄積に関して、AI活性の低下と高いSPS活性の維持に加え、特にSS-s活性の上昇が極めて重要な役割を果たしていることが認められた。 また、種子あり果実の内生IAA含量は、種子部が最も高く、次いで胎座部、果肉部となった。 後期成長が停滞した種子なし果実のIAAの含量はこれらの3部位とも低水準で推移した。In vitro条件下で内生IAA及び種子に注入した3H-IAAが種子中からアガー培地に滲出していた。これらのことから、種子がIAA生合成のセンターであり、種子で生成したIAAが種子外へ移行し、果実の後期成長を刺激していると推察した。さらに、種子なし果実へのp-CPA処理は果肉部の内生IAA含量を著しく増加させたこと、in vitroでp-CPAが果肉ディスクのSS-s活性を顕著に高めたことから、p-CPA処理はIAA及びSS-s活性を促進することによって、スクロース蓄積量を増加させると考えられた。また、p-CPAは果肉ディスクのインベルターゼ活性も著しく高めたことから、p-CPAの果実成長促進効果にもインベルターゼが介していると推測した。5. 同化産物の転流及び分配について: 14CO2実験から、メロンの転流糖はスタキオース、ラフィノース及びスクロースであった。 CPPU処理は果実への14C糖の分配率を有意に増加させた。 また、種子あり果実及びp-CPA処理した単為結実果への14C-糖分配率は無処理の単為結実果のそれに比べ著しく高かった。 成長、糖蓄積の源は同化産物であり、CPPUの果実成長の促進効果及び種子の存在並びにp-CPA処理による果実中後期成長及び糖蓄積の促進効果は同化産物の転流と密接に関連しているという新知見から、種子の存在及びCPPU、p-CPA処理が果実のシンク能を高めたことを裏付けた。6.種子の有無と香気形成について: 種子あり果実とCPPUによって誘導された単為結実果からPorapak Qカラム法を用いて抽出・濃縮し、ガスクロマトグラフで分析した。成熟及び後熟期間中にメロンの香気成分は大きく変動したが、単為結実果と受粉果との間の香気パターンの差異は可食時に近づくにつれ小さくなる傾向となった。種子あり果実は単為結実果に比べ低沸点域における揮発性成分の数及び強度とも減少したが、中高沸点の揮発成分では数及び強度ともに高いことが示された。 また、単為結実果では強い青臭み及び好ましくない薬やオイル様のにおいを有する成分多く、種子あり果実ではメロン様、果実様及び甘い香りをもつ成分が強く発現した。 可食時の単為結実果では含硫化合物が極めて多く存在した。これらのことから種子はメロン果実の香気形成に強く関与し、特に優良な香気成分の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。本論文は果実の成長、糖蓄積及び香気形成における種子の役割を植物ホルモン、スクロース代謝酵素並びに同化産物分配の観点から解明した。加えてp-CPAが種子の役割を代替し、しかも種子の存在下ではその役割を一層強化することを見出し、p-CPAを用いた高品質メロン生産技術の展開に道を拓いた。

掲載雑誌名
【広島県立大学授与】博士論文
出版年月日
2011-12-02T01:35:37Z
本文言語
日本語
資料タイプ
学位論文
著者版フラグ
著者版
学位授与番号
博甲第1号
学位授与機関
広島県立大学
学位の種類
博士
学位取得分野
生物生産学
学位授与年月日
2001-03-26
旧URI
区分
pu-hiroshima